“伊織が私のこと好きじゃないじゃん”








そう、言おうとしてた自分に驚いた。

私、何てこと言おうとしてたの?



伊織はレンタル彼氏だ。
本当の彼氏ではない。


「何よりどーしたの?」


少し刺々しい伊織の声。


「…付き合ってまだ一日しか経ってない」


「ああ、そんなこと気にしてたの」


「そ、そんなことって」


「…さっきホテルの話してたのに?」



ニヤリと笑った伊織にゾクリとした。
伊織は……怖い。


何者かわからなくて、怖い。



「あ、電話だ」


何も言い返せない私を無視したまま、伊織は電話に出た。


「もしもーし」


その声は、さっきの伊織からは想像出来ないほど甘い。
もしかしたら“彼女”かもしれない。



「うん、そうかー。わかったあ、どこ行けばいい?」