「何でだろ、なんか女の子だったってわかるんだ」


「………何だよ、それ」



余りにも現実味のない話に、俺は涙も引っ込み口元が緩む。


「うん、意識ない時さ、可愛い女の子が私を呼んでたんだよね」


「………」


「多分、いや、あれは絶対いちかだね」


「……じゃあ…」


泉のお腹に当てた手に、俺も手を重ねて。


「俺もいちかに感謝しないとだな」


そうやって、泉に微笑んだ。



君が。


そうやって、笑っててくれるなら。



どんなことも。

どんな努力も惜しまない。



泉がそうやって、笑ってくれるなら。




その日から、泉は暫くして退院をした。


特に後遺症もなく、泉は元気にしている。


俺は警察に話を聞かれたりもしたが、疑われるようなこともなく。

今度こそ、俺の父親は刑務所から出られないだろう。



罪悪感も、何もないけど。
あんな奴、刑務所の方がお似合いだと思うし。



それから半年して、俺と泉は一緒に住むすることにした。

部屋はもちろん新しく探した。