尚子はためらいながら、周りを見渡す。

それから、更に私に顔を近づけた。


「…大きな声出さないでね?」


そう言われても、私は大きな声出しそうだ。
だから、口を両手で塞ぐ。

これで、多分大丈夫。

それを見て、尚子はゆっくりと言った。


「…………その子、妊娠だったの」




…………妊娠…?

目をまん丸にして、尚子を食い入る様に見つめる。

…口塞いでおいて…よかった。


「だから、避妊してなかったらもしかしたらって思ってさ」


「………」


私は整理がつかない頭で必死に伊織とのことを思い出した。

…避妊、していない。


でも、でも…まだ再会して三か月だよ!?

そんな早く妊娠するものなの?


「…あり得ないよ」


口から手を放して、私はそう自分に納得させるように言う。


だけど、尚子は

「あり得るあり得る。
一回やっただけだってあり得るんだから」

そうやってあっけらかんとして言った。


「…………」