納得していない私の顔を見て、ふふっと和が笑うと言う。


「でも、本当にそれだけなのよ。
ムードも何もあったもんじゃないよね」


「でも、なんか真崎先輩っぽい」


「はは、私も来年には真崎になるからね」


「あ、そか」


なんて、素敵なのだろう。
好きな人の姓を語れるだなんて。


「おめでとう、和」


「ありがと。でも、泉もおめでとう」


「…うん、ありがとう」


やっぱり、和のおめでとうが一番沁みるな。

別に他の人の言葉が嬉しくないわけではなくて、和は別だったから。


「今度、伊織に会わせてね」

ウインクしながら和が言うから、私は満面の笑みで頷いた。


それから、和との会話は尽きることなくって気付いた時には外がもう薄暗くなっていた。


「うわ、もうこんな時間」


「本当に」


「この後、伊織のとこ行くんだった」


「え、そりゃ早く行かないとじゃん」


「うん」


「そんな理由なら、しゃあないなあ。
本当は飲みにでも行きたいけど」


「ごめんね、また行こう」