レンタル彼氏【完全版】

ああ、そういえばそうか。

「そうです、…彼氏へのプレゼントに悩んでいて」


自分で彼氏と言いながら、ドキドキする。

伊織は私の彼氏なのか。
そうか。

わかっているけど、どこかくすぐったい。


そんな私の心中を知らない店員さんは、頷くとまたにかっと笑った。


「素敵ですねえ!結構いらっしゃるんですよ。
小物とか、洋服とか決めてますか?」


「全く、寧ろ何を送ったらいいのかすらわからなくて…」


「ああ、わかります、悩みますよね。
俺なら彼女に貰ったものならどんなものでも嬉しいですけどね」


「そうですか?」


「ええ、まじで思います。
あ、じゃあこんなのどうですか?」


そう言いながら店員は私を誘導する。
それに着いていくと、ショーケースに入っている小物を取り出した。


「これ、今日入ったばかりなんです。
限定品なんで、被らないし、シリアルまで入ってるんですよ」


そう、言いながら取り出された品を見る。

それはシルバーのリングだった。


「………かっこいい」

思わず私はそう呟いていた。