目の前には、あれだけ欲しくて欲しくて堪らなかった泉がいた。


幻ではなく、現実に。




何もかもにしがみついてきたのに、何もかもが俺からなくなったけど。


初めて、自分から何もかもを捨てていいと思った。



ただ、泉が側にいてくれるなら。


ただ、君が笑ってくれるなら。




「………ん、ふふ」


眠れなかった俺は、既に寝てしまった泉の髪の毛を優しくすく。

それがくすぐったいのか、いい夢を見てるのか。

それはわからないが、泉が寝ぼけて笑っていた。





泉と、これから付き合っていくならば。


俺は打ち明けなきゃならないことがある。




言う、必要はないのかもしれない。


だけど、もう泉に何かを偽って、誤魔化したくないんだ。



ありのままの俺を、泉なら受け入れてくれる。


何故、そう思えるのかはわからない。

自惚れなんかじゃなく。



泉なら大丈夫だって、そう思えたから。




明日、仕事から帰って来たら泉に打ち明けよう。


どれだけの非難も全て受けとめる。



だから、どうか捨てないで。