「ない」



私の問いに即答する伊織。
その答えに迷いはなさそうだった。


「だって、俺DVDだよ?恋なんかしないでしょ」


「DVD??」


「うん、DVD。CDでもいいけど」


彼はレンタルということを言いたいみたいだった。


でも。



「伊織はモノじゃない、人間じゃんか」



私は本気でそう思った。
なんか、DVDとかCDとか。


何でモノみたいな言い方するんだろう。


レンタル彼氏って名前だけど、客はきっと伊織を一人の異性として見てる。



「あはー、泉って素直だね」


「だって、そうじゃん」


「……モノみたく扱われたことないから言えるんだって」


「え?」


「ううん、何でもない。もう、行こうか」


「え、あ、うん」



今回のは本当に聞き取れなかった。
なんだったんだろう。



伊織と話せば話すほど、謎が深まるばかりだった。