「あの日。
俺の父親が店に来ました」


先に俺に質問した男の後ろにいた若い男がメモを取りながら俺の話を聞く。

多分、部下なのだろう。


「…いつもの様に母親に金をせびりに来ました」


「いつもの様に?」


「はい、父親は愛人を作っていて、その人と住んでたらしくて。
だけど、離婚してないから母親に金をせびってました」


「……はあ、成る程。
頻繁にあったのかな、それは」


「…一週間に二回、多くて三回とかでしたけど」


「その都度、君の母親はお金を渡していたんだね?」


「…………はい」


「それで、あの事件を起こした理由ってのはなんだったんだろう?」


俺は俯いて、拳を作って強く握り締めた。



「…俺が、もうやめてくれって言ったんです」


俯きながら、俺は声を震わせて言った。
ぴくりと反応した刑事が、俺に言う。


「……何を、やめてと言ったんだ?」

ゆっくりと顔をあげると、俺は刑事の顔を見る。





「もう、離婚してくれと言いました」