「でもさっ、まだ諦めてないんだ」


聖を見て、へへへっと笑う。

「バカでしょ、でも、私が信じてあげないと伊織に誰もいなくなっちゃうでしょ」


「………いずちゃん」



そう、思うんだけどね。


やっぱり。





やっぱり、会いたかったよ。


本物の伊織を抱き締めたかったよ。



「…ごめん、俺の所為で…」


謝罪の言葉を出す聖に人差し指を立てて、私は口元に持っていく。


「後悔してないなら、謝らないのっ!
私は何も恨んでない。
…私は聖と出会えてよかったんだから」



負の連鎖を、打ち切ると決めたのは私だから。
今更聖を恨むことはしないし、聖が後悔することもない。




ただ。


願うことは。




伊織。



……笑っていますか?





今、笑っていますか?




寂しがりなのに、打ち明けられない彼だから。

一人で泣いていませんように。



願うことは。

たった、それだけ。




伊織。


笑っていて。