偽善だと思うなら思えばいい。


私には復讐をした聖も、酷く傷付いてるように見えるから。


皆、何かに傷付いて。


愛されたいと想っているんだ。




聖が、母親に愛されていたと言ったのは。
そう、思いたかったからなんだ。


「…………聖、もう平気………?」


「…………」


コクンと聖は頷く。

それを見て目を細めた。


「……私、帰る。
明日、また大学来てよ」


「……行かない」


「来て、皆でまた遊ぼ?
学も尚子も心配してる」


「…………」


「そうだ、ケーキバイキング行こう?」


「…………」


「…ね、約束」


無理矢理聖の手をとり、私は小指を絡めた。


指切りをすると、立ち上がった私は玄関へと向かった。
投げ出されたパンプスを拾って、それに足を入れる。


ドアノブに手をかけたその時。




「泉っ!!!」

聖が私の元へ駆け寄る。


それから。


「……これ、伊織の、連絡先」


そういうと、一枚の紙を手渡した。