「……うぅ…」


「毎年毎年、この日は伊織が生まれて来たことに感謝するのよ」


“伊織を産んでくれてありがとうって毎年、この日になると思うんだ”


大事に。

思われていたのに。


「伊織が生きてることが辛いなら、立ち止まってみたらいい。
そこから周りを見渡せばいい。
そんなことを思う時は、伊織の心に余裕がないのよ。
完璧でいる必要なんかないの。
人は不完全なぐらいが丁度いいのよ」


「………ふっ、うぅ…」


ぼろぼろ、ぼろぼろ。

涙が溢れる。



こんな風に。

誰かに必要とされたかったんだ。



“伊織が、今を生きてる意味ちゃんとあるから”



俺が生きる、意味。


鈴恵さんと美佳の為じゃないか。



俺が生まれてきたことを、嬉しいと思ってくれてる、その人の為じゃないか。


もう、間違えない。


何も、持ってないのかもしれない。
だけど、鈴恵さんと美佳は俺を必要としてくれているんだ。



それだけで。
それだけで十分じゃないか。