聖に何も言えなかったのは。
きっと、急にレンタル彼氏を失わせた後ろめたさから。
結果的に見て、誰も悪くないのかもしれない。
でも、もしかしたら誰もが悪いのかもしれない。
レンタル彼氏を始めた社長。
それに誘った美佳。
俺を自由にしようと通報したりさ。
りさを誘惑した俺。
何もかもが悪いのかもしれない。
全てがうまくすれ違って、うまく重なって。
起こった出来事だから。
「伊織?」
ハッとして俺は鈴恵さんの方を振り向いた。
洗濯物を干しながらぼーっとしていた。
「伊織、最近働きすぎよ?」
「何言ってんの、そんなら鈴恵さんもじゃん」
「伊織はバイトもしてるでしょ?家事なんて仕事してることに比べたら全然よ」
鈴恵さんは俺を心配してくれて言ってるのはわかる。
でも。
何もしない方が。
………きっと、壊れちゃうよ。
修復、不可能なぐらいに。



