「…ふうん。
じゃあ、今度ふりふりワンピ着てくる」


「えっ!無理!そっちのが無理!いずちゃん似合わない!」


「似合わないって酷いな、これでも女の子だけど」


「あははっ!分かってるよ、そんなこと」


笑う聖の後ろから、パタパタと走り寄る男の子が聖を大きな声で呼んだ。


「ひーじーりー」


「あっ、学」

近くまで走ると、息を切らしながら学と呼ばれた彼は微笑んだ。


「こいつは同じバイト先の学」


「よろしく」


「あっ、泉です」


「いずちゃんは俺のだから、ダメだよ?」


「はっ?」


「ぶっ、分かってるって」


学はまた笑うと、聖の頭をぽんぽんと叩いた。


学はミディアムの黒髪で、天然なのかはわからないが緩くパーマがかっている。
細いフレームのメガネをした奥に、優しそうな瞳があった。


聖と10センチ以上も身長が違うし。
すらーっとしたスタイルにかっちりシャツで合わせていて、森ガールならぬ森ボーイみたいな服装だった。


ほお。
これは尚子、好きそうだ。

「いずちーん!!」


私がうんうんと頷いていると、後ろから尚子の声が聞こえた。