「いずちゃん」


泣き止んだ聖が私を上目遣いで見ながら呼ぶ。

「…何」


「……これからどうする?」


「講義受ける」


「俺とのデートは?」


「しない」


「…………」

また目をうるうるさせる。
苦手だよ、本当。

「……尚子と、誰か他の男の子呼んで四人ならいいよ」


「四人じゃデートじゃないじゃん」


「ダブルデートじゃん」

やられた!って顔をする聖。
まだ釈然としない顔で、渋々頷いた。


「じゃあ、誰か一人呼んでね」


「わかった」


「尚子の好みは、メガネ男子ね。
で、スマートならなおよし」


「…う~ん、わかった」


首を捻りながら聖は再度頷いた。


どうせなら尚子とその男の子を引っ付かせることに集中しよう。
それなら聖とのダブルデートの意味もある。


無理矢理納得させて、私は聖とそこで別れた。
結局、カバンは返してもらえなかったけど財布あるからいらないや。

中身、そう大したモノ入ってなかったし。