レンタル彼氏【完全版】

「伊織っ!?」


りさにかけるとワンコールで繋がった。
俺が突然消えたからか、相当焦っている。

俺が眠ったと安心しきって見張りも何も置かねえからだよ。
そう、心の中で毒づく。

それを抑えながら俺は低い声を出して、りさに尋ねた。


「………どういう事だ」


「……話、するから今どこにいるの?」


「……………寮」


「わかった、すぐに迎え行かせる」


返事をしないで俺は携帯を切った。
力が入らない手を強く握りしめる。

それから五分とせず、迎えの車が来た。

「伊織様、乗って下さい」

丁寧に男が言うのを無視して、俺は無言でその車に乗り込んだ。
中にりさはいない。

また、あの病院まで連れて行かれるかと思ったけど連れて行かれたのは高層マンションの一室だった。


だだっ広い、部屋。
その中に、ぽつんとりさがいる。


その顔を見るやいなや、苛立ちを抑えきれず俺はりさに喰ってかかった。

「どういうことだよ!?これは!!!」


掴みかかろうと、りさめがけて走る。
案内した男達が慌てて俺を取り押さえた。

もがく俺をりさは静かに見下ろす。


「いいわ、離して」

それからそう言った。
そのりさの言葉を聞いて、すぐに俺は解放される。

距離はあったけど、俺はりさをずっと睨みつけていた。

「………伊織、貴方を解放したかったの」


「それと、警察、何が関係あるんだよ!」


「伊織、自由になりたかったんでしょ?」


「っ!!」


はっきりと、通る声でりさが言う。
それに俺は息を飲んだ。


「これで自由よ」


その言葉に俺は膝をついた。

そのまま、頭を抱え込む。