「ねえ、伊織?」


「……何?」


「伊織は人をもっと信じないとダメよ?」


「……また、裏切られるじゃないか」


「それでも、よ」


「傷付いたらどうするの?」


「人を恨まないの」


「どうやったらそんな事出来るの?」


「怒りは怒りしか生まないよ?」


「…我慢するの?」


「耐えるのよ、耐えたら必ず伊織に笑いかける」


「誰が?」


「…私と、あの子」


「…あの子?」


「そう、あの子」


「わからない、教えて」


「わかってるはず、もう伊織はわかってる」


「わからないよ、わからない」


「嘘」


「あっ、美佳!美佳!」



消えていく美佳を掴もうと、手を伸ばす。
そのまま、俺は机の脚に頭をぶつけた。


「…………いてぇ」


頭を打ったじゃん。
てか、何回目だよ、この夢見るの。


………まじやめて欲しい。


目覚めわりぃな、畜生。

二度寝も出来なさそうだったから、俺は起き上がると一度伸びをした。


それから、昨日買っておいたペットボトルのお茶を一気飲みする。