暫く、ベンチに座って気持ちを落ち着かせてから俺は別のスーパーで買い物をして帰宅した。


いつもより一時間も遅い。
帰った俺を鈴恵さんが心配そうに見つめる。


「……鈴恵さん、ドーナツは?」


「………あるわよ?あっち行く?」


「……うん」


何も聞かれないことに、安堵した俺は返事をして室内に入る。
入ったと同時に、のりやしょうや、あんが俺に気付いて声をかける。


「あっ、にぃに」


「ドーナツあるよ!」


「にぃに、おかえりー」

口々に言うこいつらに、思わず口元がゆるむ。


「ただいま、いい子にしてたか?」


「してたよー?」


「あ、今日ね、ねぇね来てた」

しょうが思い出したように言う。
それを俺が聞き返す。

「ねぇね?」


「うん、ねぇね」


「ねぇね、優しかったねー」


「ねぇねは何してたの?」

俺がそう訪ねると、今度はのりが答える。


「まあまとお話してた」


「鈴恵さんと?」


「うん」


「そっか、あ、俺にもドーナツちょうだい」


「いーよ!これ俺たちが作ったんだよ」


自慢するようにお世辞にも綺麗とは言えない形のドーナツを俺に渡す。
それを受け取って一口頬張った。