店長が今謝ったのは、自分が楽になりたいだけなんだ。

イケイケだった昔の面影なんかなくって、よき旦那な雰囲気をぷんぷんさせて買い物カゴを持っている。






欲しかった未来は全て、あの時に失ったんだ。

堕ちるとこまで堕ちて、身内のいない俺は、何もかもを失って、あの施設に戻ったんだから。



「はっ………!」

俺は嘲笑うと続ける。


「今更何を言おうと、俺はもう昔の俺じゃない。
イロをした時に、俺は俺を捨てたんだ。
そうさせたのはあんたじゃねえか」


「…………伊織」

店長は言葉を呑み込む。


「そのお陰で今、俺には何も残ってないんだ。
だから、もう二度と俺に関わらないで。
見ても話かけたりなんかしないで」


それだけ言うと、俺は踵を返してカゴを置き去り、スーパーを後にした。



そのまま、バイクに跨がると無我夢中で走らせた。


これからはもっと遠くのスーパーにしなきゃ。


あんなとこに住んでたなんて。


悔しさと、切なさと、憤りと。



ぐちゃぐちゃに折り重なって俺にのしかかる。