「今日、一緒に帰ろうよ」


「もちろんっ」


「じゃあ、駅前マックでも行く?」


「いいねっ」


「あー順二ー」


私が返事をすると、和が帰り支度をしている順二に話し掛ける。
順二は一度、こっちを見てからすぐに顔を逸らした。


「何」


「順二も帰ろーよ」


「いや、俺寄るとこあっから」


「そーなんだ、残念。今度帰ろう」


「ああ、空いてたらな」


「じゃーね」


和が手を振ると、順二は軽く笑って教室から出ていった。

和が私の隣の席に座ると、順二の後ろ姿を見て呟いた。


「…順二、素っ気なくなったよね」


「……まあ、私が原因だよ」


「…そーかもだけどさ…」


だけど、男らしくない!と頬を膨らませながら和は立ち上がる。
和の気持ちは痛いほどわかった。


逆に、順二の気持ちも。


私はことごとく、順二の気持ちをはねのけて、踏み躙ったのだから、素っ気ないのはしょうがない。

寧ろ、当たり前のことだとすら思う。


馬鹿みたく、伊織しか見えないのは私なのだから。