意味がわからなくて、首を傾げて美佳を見据える。

「伊織は、さ。
もう根本的に人を信用してないわけ。
だから、そんなに脆いの。
自信はあるのに、人の好意は苦手なのよ。
でも、理由があるんだよね」


「……………」


「親に捨てられたと思いながら生きてきて、15で体売ったりしてたんだから…」


“もう、いらない”



美咲さんの言葉が頭を駆け巡る。
もう、かなり昔の話なのに鮮明にはっきりと頭の中で俺に話し掛ける。


お前は、もういらないんだと。



“お父さんを、愛していたのよ”



母さんの、死ぬ間際のセリフ。
結局。
俺は母さんの一番にはなれなくて。


常にあの男の次だった。


「…そんな伊織が心を奪われた子なら、裏切らないと思う」


「…………」


「やっぱり伊織には人を信じてもらいたい」


「……無理だよ」


「あら、何で?私のこと疑ってる?信用してない?」


「…………美佳は…」


ニコニコしながら俺の言葉の続きを待ってる美佳。

そんな美佳に素直に返すのが照れ臭くて。




「美佳はムカつく」


そうやって。
いつまで経っても子供な俺がいたんだ。