ぽたぽた零れ落ちる涙を拭おうと、俺に手を伸ばすけど。
もう、腕を上げる力すらないのか、母さんはその腕を床に落とした。


「………い、お、り」


母さんも泣いていた。


最期の最期に最愛の夫に見放されて。

絶望したかい?
少しは後悔したかい?


もう、言葉を紡げなくなったその体を抱き締めて。
熱がなく、冷たくなってきたその体を。



優しく笑うことがもうない、その体を。




強く、強く。



抱き締めた。







何で。


こうなったのか。


ただ、俺は笑っていたかっただけなのに。
俺が誰かを愛そうと、誰かを求めようと。


そう、思う度に。


離れてゆく。



“いらない”

美咲さんの言葉が俺の頭の中をリフレインする。



「………かあ…、さん」