レンタル彼氏【完全版】

「………本当…?」


「え?」


「………俺のこと、捨てない?」


「…バカね、するわけないでしょ」


「でも…」



一度、俺を捨てたじゃないか。

そう、言いそうになってはっとする。
そんな俺に気付いたのか、気付いてないのか。



「お母さん。
……もう、何があっても伊織を離さないって決めたのよ」



真っ直ぐ。
しっかりとした。

凛とした瞳で。


俺を見て、母親ははっきりとそう言った。


「もう、二度と」




するすると俺の力が抜けて行く。
はたりと落ちた涙。


気付けば俺は俺の罪を告白していた。



「…俺、体売ったんだ…」



そう。

体を売った。


この体を簡単にお金に変えた。



汚い。汚いでしょ、俺。


………汚い。


震えた手で自分の反対の腕を掴むと、俯いた。
真っ直ぐな、その瞳が怖い。


だけど、俺の耳に入った言葉は予想外のものだった。