あいつがここに来て、もう数ヶ月。


本格的な夏の暑さがまた俺をイラつかせた。


何をするでもない。
どこに行くでもない。


ただ、そこら辺をぶらぶらと歩いた。


「ねえ」


ぶらぶらと、歩く俺に後ろから声がかかる。

ゆっくり振り向くと、髪が綺麗な女の人がそこにいた。
この人が今、俺に声をかけたの?


「今、暇してるの?」


そのセリフに、ぞっと背筋が凍り付いた。
いつか、聞いたような言葉。


それは美咲さんを思い出させた。
ドキドキしながら、その人の言葉に耳を傾ける。


「暇ならお姉さんといい事しない?」


厚化粧のその女は、にっこりと笑って俺の腕を取る。
それに、愕然とした。



こうやって。




どこも愛のないセックスを繰り返すのだろうか。



「………いくら」



その言葉が勝手に俺の口から洩れる。


「え?」



俺の腕を掴んだまま、彼女は目をパチパチさせる。

そんな彼女を嘲笑うようにふっと笑うと、

「俺、高いよ?」


そう言った。