一人の人間が、色々な血液型だと扮装して。
10代でも20代でも話を通じるようにしなくてはいけない。



それって。


……果てしない労力だ。




違う人間にならなきゃいけない。

本当に俳優になったかのような気分だろう。





私は自分のチケットに書かれた席番号と、席を見比べる。



そこで私はまた目をまん丸にした。





私の席は。



伊織の真後ろだ。





それがわかった途端、全身に緊張が走った。



この世のものではないものに出会った感覚というのが正しいのだろうか。



初めて見た時からそんな感覚が伊織にはある。