レンタル彼氏【完全版】

この人が怖い。


背筋が凍りつきそうになりながら彼女を見つめる。
そんな俺に気付いた彼女は、首を傾げて

「なあに?」

そうやって、微笑んだ。

「いや、な、何でも」


「そう?おかしな伊織っ」

けらけら、笑いながら美咲さんは着替えるために更衣室へと向かった。

その姿を呆然と見つめる。

これが。
これが、ナンバーワンの実力なのか…?


……本当の女優は間違いなく、彼女だ。


「伊織」

ぽんっと肩に手を置かれて、思わずびくっとする。

そんな俺に店長が笑いながら

「どうした?」

そう言った。


「あ、いえ、何でも…」


「そうか?もう、開店するから顔拭いておけよ」


「…あ、はい」

タオルを渡されて、素直に従って顔を拭いた。