辿り着いて、俺は事務所に一目散に飛び込んだ。

まだ、キャストはいない。
いるのは店長とボーイだけ。

尋常でない俺の様子に、店長が走り寄ってきた。

「ど、どうした?!」

ふわっと、タバコの香りが俺の鼻をくすぐった。
…大人の香り。

「…………行く、場所がない」


「……はあ?」


「…俺、独りだ」

自分で言っておきながら、その言葉に胸が詰まる。
苦しくて、胸をぎゅうっと掴むと店長の言葉が俺に降ってきた。


「…何、言ってんだよ。
俺等いんじゃんか」


「…え?」


震えながら、俺は店長に視線を合わす。
店長は真っ直ぐに俺を見ていた。

ただ、真っ直ぐに。

「独り、だなんて寂しいこと言うなよ。
なにか、お前は俺達のこと赤の他人だと思ってんのか?」

眉をひそめて言う店長に、ふるふると首を振って否定する。


違う。違う。

俺、この店。


大事なんだ。