カチッ。

店の女に貰ったジッポの蓋を慣れた手つきで開けた俺は、そのままタバコに火を点けた。

肺に静かにゆっくり吸い込んでから、また俺はゆっくりと煙を吐き出す。

がちゃりと扉の開く音がする。


「伊織もお風呂入ったら?」


「いや、いい」


「そ。じゃあ、ご飯でも食べる?」

俺は点けたばかりのタバコを灰皿に押しつけると、その女の腕を引っ張って抱き締めた。


「…由宇を食べる」


「キャハハ、何言ってんの!?」

俺に抱き締められたまま、パタパタ足を動かして由宇は笑っている。

ふと。
視線が絡んで。

どちらからともなく、唇を重ね合わせた。


あれから二ヶ月が経った。
俺はこの由宇に色恋していた。

由宇は、店のナンバー3。
だけど、彼氏と別れる度に逃げたりする。

そんな由宇を繋いでおくためだけに、俺は毎日好きでもない由宇に

「愛してるよ」

そう、囁くんだ。