「まあ、無理にとは言わねえからさ。
美咲のお気に入りだから、それで敬遠する奴も、実際いるし…」

俯いた俺は

「…やります」

そう、はっきりと呟いた。
店長が目を見張りながら俺を見る。

「…無理は、するな。
男は女ほど初めてにこだわんねえとは思うけど、だからといって好きでもない奴を率先して抱く必要はねえんだ」


「……やります。
俺、そういうのあんまり執着ないんで」


「…そうか」

言い出したのは店長なのに、苦い顔をしながら俺を見つめた。
一度、小さく息をついてから店長はやるなら、と色々一から教えてくれた。

こうして、近付いて、こうやって落として、こうすれば大体女はハマる。


ホストみたいに色々な女の繋ぎ方を教わっては、俺は熱心に頷いた。
この繋ぎとめ方が、レンタル彼氏でも役立つだなんて…この時の俺は微塵も思ってなかったけど。


キャストとの色恋を引き受けたのは、ただ単に踏み出したかったんだ。



堕落していくのを、大人になると履き違えていた俺は、やっぱりまだまだ子供だったんだ。