「……信じ、らんねえよ」


片手で顔を覆うと、伊織は私から離れようと体を起こした。
だけど、私が伊織の腕を掴んでそれを阻止する。


「伊織のこと、好きなんだよ!」


「じゃあ、あいつは誰なんだよ!」


「…あいつって?」


「学校から楽しそうに…歩いてた」


「………学校?」


…………男?


一緒に帰ったりとか、順二以外ない。
もしかして、順二のこと…?

てか、見てたの?


「そいつ、お前のこと好きなわけ?」


「…えっ?」


その伊織の問いで、私は昨日の順二の告白を思い出して顔を紅潮させた。



それが。


伊織の心の傷を抉るにはぴったりだったみたいで。



私は。
何が起こったのか。

すぐに理解出来なかった。



ただ。


苦しかった。



段々と薄れてゆく意識の中で。






………伊織の涙を見た。