レンタル彼氏【完全版】

ドキドキしながら、私は洋服を選んでいた。

コットンの三段レースマキシに、タンクを合わせて、その上からフリンジがついたベストを羽織る。

だて眼鏡をしてから、リボンをサイドにつけて。

キャメルのリュックを背中に背負うと、私はこっそり部屋から出て玄関に向かった。

母親はテレビに夢中みたいで、私には気付いていない。


そろりそろりと玄関まで行くと、またゆっくり扉を開けて音を立てないように閉めた。
鍵をかけると、私は自転車に跨って伊織との待ち合わせ場所へ急いだ。



早く。
早く会いたかった。


伊織の顔を早く見たかった。
抱き締めてもらいたかった。


温もりを感じたかった。



ううん、そんなこと今はいい。
伊織にただ、会いたかったんだ。


伊織に。