苦しいのはきっと、順二の方なのに優しく頭を撫でてくれてて。

「…ごめっ、ん、ごめ」

泣きじゃくりながらも謝る私の背中を、順二は黙って規則正しく叩いてくれる。


「…泉を困らせたいわけじゃないからさ…。
…ただ、泉が幸せじゃないなら諦めつかねーだけなの」


「…うんっ、うっ、ん…」


こんな近くに、ずっとずっと気付かなかった幸せの欠片があって。
なのに、それを掬い取ることが出来なくて。


もしも、伊織との未来が明るくなくても。


きっと。

私は伊織を選んでしまうんだ。


真っ当な幸せを手に入れるのが、一番なのに。


私を支配するのは伊織だけなんだ。