「…………え?」 軽く手が震える。 理由はわからない。 「パリを拠点に私の作品を発信させたいの」 キラキラと目を輝かせる万里さん。 40になると言うのに、夢に満ち溢れた少女みたいな目をする。 「…………だから、ね」 パリに住む。 そう、だから。 「…伊織とは今日でさよならだわ」 聞いて、なかった。 知らなかったよ、万里さん。