レンタル彼氏【完全版】

こめかみを抑えながら、ずっと難しい顔をしている。

疲れてるんだろうな。


…………そんなこと知らないけど。
だけど、理想の彼氏ならこうするんだろ?


「万里さん」


「………何」


「コーヒーでも飲む?」


「…………お願い」


顔も上げずに呟く。
俺はわかってた。


彼女の吐き出す気持ちを。

Sやらなんだと、色々蔑んだ俺だけど。
万里さんが孤独なのは知っていた。


40に手が届きそうな歳になるのに、子供は疎か結婚すらしていない。
まだまだ20代後半と言っても通じる容姿なのに。



レンタル彼氏。

それは心の隙間を埋めるため。