レンタル彼氏【完全版】

通話を終えて、電話を乱暴にソファに投げた万里さんの機嫌はすこぶる悪い。


「………伊織」


「……何ですか」


「私を好きだと言いなさい」


「万里さん、好きです」


「…………」


はあっと大きく溜め息を吐くと、興味をなくしたのか、万里さんはそこに座ってテレビでもつけてたら?と俺を促した。

俺は黙ってソファに腰を沈める。


何度も何度も何度も。
ここで“そういう事”をしてきた。


無駄なことを考えないようにと俺は心の扉を閉じた。


後ろの万里さんにちらっと視線を送ると、いつもはかけていないメガネをかけて書類に目を通していた。