レンタル彼氏【完全版】

逆らうことも出来ず、俺は彼女の従順な人形になる。
動くだけで、心を持ち合わせてない人形。



白金。
一等地にあるその家に優雅に入って、自室に俺を連れ込んだ途端。


ガラリとその場の空気が変わる。

毎回毎回、これには慣れない。


「さて、伊織?
肩を揉んで」


「……」


俺は黙って彼女の指示に従う。


「………違うわ、どうしてそんなに下手なの?!」


怒声と同時に降る、頬の痛み。
無表情で万里さんを見つめると、万里さんはニヤリと不適に笑う。


「そう、それ。
その瞳を崩すのが面白いのよね?」


たった今叩いた俺の頬をそっと撫でると、髪の毛を鷲掴みにする。
思わず痛みで顔を歪めると、万里さんは満足した顔で俺の頬をぺろりと舐めた。