「………」


「………」


無言で並んで歩く。
伊織はさっきから何も言わない。


ただ、一緒にいてと言われてからずっと手を繋いでいる。

伊織の手は驚くほど冷たかった。


「……伊織、この後どこ行く?」


「…ケータイショップ」


「え?ケータイ?」


「…変えるから」


「そうなの?新機種とか?」


「まあ、そんなとこ」


「じゃあ、行こうよ」


「まだ、後20分はかかる」


「もう手続き済ませたの?」


「うん」


私を忘れるための機種変だとは思いもしなかったけど。


「ケータイショップの近くで時間潰す?」


「…ん」


伊織は軽く頷くと、携帯ショップに向かって歩きだした。
伊織が言う携帯ショップの近くに喫茶店があったはずだ。

そこにいけばいい。