「……う、うん」


「俺と、一緒にいて後悔しないな?」


……これは夢?

伊織は。彼は。
なんて、言ったの?今。


まだ、呆ける私の瞳を真っ直ぐに見つめると伊織の顔が段々と泣きそうになっていく。


それから伊織は震える声で


「……俺と一緒にいて」


そうやって、私の肩を掴みながら呟くように言った。


私は泣きそうになるのをどうにか堪えながら、精一杯の明るい声を出して頷く。


「………うんっ」


そんな私を伊織は痛いぐらいに抱き締めた。
呼吸が出来ないぐらいに。


強く。
強く…。




これは現実なんだ。

一か月。
ずっと、伊織のことを考えていた私に訪れた奇跡なんだ、きっと。



震える伊織。
その伊織がどうしようもなく、好きだと思った。