偽装結婚の行方

「ふうー。しかし驚いたなあ」

「本当にごめんなさい。こんな事に巻き込んじゃって……」

「それはともかく、事情を説明してくれるかな?」


尚美には聞きたい事が色々ある。例えばこの赤ん坊の本当の父親は誰で、なぜそれを隠し、なぜ俺の子と偽ったのか……

あ。赤ん坊の名前もまだ聞いてなかったな。


「はい。でも、何から話せばいいのか……」

「その前にさ、この子、名前は何ていうの?」

「ああ、言ってませんでしたっけ? 希です」

「ノゾミ、ちゃん?」

「希望の“希”です」

「ふーん。って事は、女の子?」

「もちろん。男の子に見えますか?」

「え? いやあ、そんな事はないけど……。俺、赤ん坊を間近で見た事がなくてさ。よく分からないんだよね」

「あ、そうなんですか……」

「よろしくね? 希ちゃん」


と言っても、希ちゃんは黒目がちの大きな目で俺を見つめるだけだった。


「まだ喋ったり出来ないの?」

「まだですよー。まだ1歳にもなってないんだから……」

「あ、そうなんだあ。ところでさ、みんなは俺に似てるって言うけど、本当なのかな?」

「はい、似てると思います。だから、あなたにしちゃったんです」