偽装結婚の行方

「それは俺にも解るよ。そこでさ、俺はある秘策を考えついたんだ」


俺は得意気にそう言った。ドヤ顔になっていたかもしれない。


「秘策?」

「うん。尚美は、まだお母さん達に本当の事を話してないよな?」

「うん、まだ……。でも、どうしてそれを涼が知ってるの?」

「ん? お母さんと話したからさ。ここに来る前に」

「そうなの?」

「ああ、家に帰ってもお前達がいないから、実家に帰ってると思ってお母さんに電話したんだ。その時にわかったよ。おまえがまだ話してないって。俺はホッとしたね」

「ホッと? どうして?」

「もし話しちゃってたら、秘策が成り立たないからさ」


尚美は、不思議そうに首を傾げた。


「もちろん俺もお袋達に話してない。だから秘策が成り立つんだ」

「秘策って、何なの?」

「うん。そんな大げさな事じゃないんだけどね。実はさっきチョロっと言ったし……」

「そうなの?」

「ああ。でもわからないよな?」

「うん、ぜんぜん」

「じゃあ言うよ」


そこで俺は言葉を切り、息を調えて言った。


「このまま嘘を続けよう?」

「…………えっ?」

「希ちゃんは、俺とおまえの間に出来た子ども、って事で通す。本人にも」

「本人って……希?」

「そう」


実は秘策と言う程、大した計画ではないと俺は思ってるが、尚美は十分に驚いたようだ。目を見開き、口をポカンと開けていた。