俺が渡辺さんの名前を言ったら、案の定尚美はびっくりしていた。
「ど、どうして分かったの?」
「渡辺さんの事か?」
「う、うん」
「それはね、尚美がお母さん達と家に来た日、相手の男は既婚だって俺に言ったよね? そして相手に迷惑が掛かるから名前は言えないって……」
「……あ、そうね、確かに言ったわ」
「俺、その時思ったんだよね。その相手は同じ会社の奴じゃないかって……」
「どうして?」
「だって、そうでなければ俺に名前を言うぐらいは問題ないはずだろ?」
「あ、そうか……」
「そしてこれが一番の手掛かりだったけど、その男の顔が俺に似てるって言ったよね? 希ちゃんが俺に似てる理由として」
「うん、言っちゃったね」
「それだけ分かればあとは簡単だったよ。阿部に聞いたら、渡辺っていう男が尚美の元上司で、嫁さんが役員の娘で、席は尚美の隣で比較的仲が良くて……とか。そしてこれが決め手だけど、その男の顔は俺に似てるっぽい。俺はその渡辺って人の事は全く知らなかったけど、もうその人で決まりだと思ったね」
「うわあ……。涼って意外に頭いいんだあ」
「“意外”は余計だっちゅうの!」
尚美の頭をゲンコで軽く小突いたら、尚美は「えへ」と目を細めて笑った。それを見て、やっといつもの尚美に戻ったな、と俺は思った。
「ど、どうして分かったの?」
「渡辺さんの事か?」
「う、うん」
「それはね、尚美がお母さん達と家に来た日、相手の男は既婚だって俺に言ったよね? そして相手に迷惑が掛かるから名前は言えないって……」
「……あ、そうね、確かに言ったわ」
「俺、その時思ったんだよね。その相手は同じ会社の奴じゃないかって……」
「どうして?」
「だって、そうでなければ俺に名前を言うぐらいは問題ないはずだろ?」
「あ、そうか……」
「そしてこれが一番の手掛かりだったけど、その男の顔が俺に似てるって言ったよね? 希ちゃんが俺に似てる理由として」
「うん、言っちゃったね」
「それだけ分かればあとは簡単だったよ。阿部に聞いたら、渡辺っていう男が尚美の元上司で、嫁さんが役員の娘で、席は尚美の隣で比較的仲が良くて……とか。そしてこれが決め手だけど、その男の顔は俺に似てるっぽい。俺はその渡辺って人の事は全く知らなかったけど、もうその人で決まりだと思ったね」
「うわあ……。涼って意外に頭いいんだあ」
「“意外”は余計だっちゅうの!」
尚美の頭をゲンコで軽く小突いたら、尚美は「えへ」と目を細めて笑った。それを見て、やっといつもの尚美に戻ったな、と俺は思った。



