偽装結婚の行方

「死のうなんてするからさ。ね、希ちゃん? “わたしはまだまだ死にたくないでちゅ”よね?」


希ちゃんを抱き上げると、すぐにニコニコッと笑ってくれた。


「し、死ぬ? それってどういう事?」

「惚けるか? ま、それでもいいけどさ。その代わり二度とそういう事は考えるなよな?」

「ちょっと待って? どうして私が死ななきゃなんないの? これから好きな人と結婚するというのに……」


語尾が尻つぼみになりながらも、尚美はそんな事を言った。俺が全てを知ったとも知らずに。

俺は、面白いから少し尚美をからかってやろうと思った。


「結婚? 結婚ならもうしてるだろ?」

「えっ?」

「俺という歴とした旦那がいるじゃないか」

「な、何を言ってるの? 私達はもう終わったじゃない……」


尚美はとたんに泣きそうな顔をした。あまりからかったら可哀想だな。ほどほどにしよう……


「終わっちゃいないよ。終わってたまるか」

「え?」

「尚美はちょっとばかり浮気をした。その結果希ちゃんを産んだ。でも俺はおまえを許すし、希ちゃんは自分の子どもだと思ってしっかり育てる。そう決めたんだ」

「涼、あなたの言ってる事がさっぱり解らないんだけど……」

「そうかなあ。実はね、今日、俺は話をしたんだよ。おまえの浮気相手の……渡辺さんと」

「えっ……嘘!?」