尚美の所まであと5メートル程の位置で俺は足を止めた。こちらに背を向け、栗色の髪を風になびかせて立つ尚美は、まだ俺に気付いていない。海を見てるのだろうか。今、何を思っているのだろうか……
“尚美!”と声を掛けたいが、それは危険ではないだろうか。驚いたはずみで、あるいは気持ちが混乱し、崖から転落……なんて事にならないだろうか。いや、その可能性は否定出来ないと思う。ではどうするか……
よし、そうしよう。
俺は瞬時にある方法を考え、それを実行する事にした。
まずは気配を消し、静かにそろりそろりと尚美の背後に近付いていった。そして尚美のすぐ後ろまで近付くと、両腕を大きく広げ、ガバッと尚美の体を抱きかかえた。
「きゃっ」
尚美は小さく悲鳴を上げ、次にもがきだしたが、俺はそれに構わず、ガッチリ彼女を抱えたまま後ろへ後退った。3歩、4歩、5歩。このぐらいで大丈夫かな。
「ちょっ、な、何を……」
「尚美、俺だよ?」
「えっ?」
俺が腕の力を緩めると、尚美はクルッと振り向いた。
「りょ、涼!? どうして……」
尚美は、目をまん丸にして俺を見上げるのだった。
“尚美!”と声を掛けたいが、それは危険ではないだろうか。驚いたはずみで、あるいは気持ちが混乱し、崖から転落……なんて事にならないだろうか。いや、その可能性は否定出来ないと思う。ではどうするか……
よし、そうしよう。
俺は瞬時にある方法を考え、それを実行する事にした。
まずは気配を消し、静かにそろりそろりと尚美の背後に近付いていった。そして尚美のすぐ後ろまで近付くと、両腕を大きく広げ、ガバッと尚美の体を抱きかかえた。
「きゃっ」
尚美は小さく悲鳴を上げ、次にもがきだしたが、俺はそれに構わず、ガッチリ彼女を抱えたまま後ろへ後退った。3歩、4歩、5歩。このぐらいで大丈夫かな。
「ちょっ、な、何を……」
「尚美、俺だよ?」
「えっ?」
俺が腕の力を緩めると、尚美はクルッと振り向いた。
「りょ、涼!? どうして……」
尚美は、目をまん丸にして俺を見上げるのだった。



