偽装結婚の行方

うーむ、隣のお姉さんのおかげて、尚美達はどこか遠くへ行った可能性が高い事がわかった。朝早くに、しかもよそ行きの支度をして出掛けたという事は、そういう事だと思う。

だが、そうなるとますます行き先に見当もつかず、探そうにも探しようがない。


くそっ。ここで帰って来るのをジッと待つしかないのだろうか……


ダメ元でもう一度尚美の携帯を呼び出してみたが、やはり呼び出すだけで尚美は出ない。俺、完全に避けられてるな……


ん? 待てよ。


携帯を睨みながら、俺はある事を思い付いた。何て言ったかなあ。あ、そうそう、GPSだ。尚美は携帯の電源を切っていないし、尚美の携帯は俺のと同じ機種のスマホだ。GPSという機能で、現在地を調べる事が出来るんじゃないか!?


早速ネットでGPSを検索してみた。すると、登録が無くても現在地を調べられる事がわかった。


やったー!


だが、問題があった。それをするには、IDとパスワードが必要らしい。もちろん尚美の携帯のだ。


うーん、そんなの俺が知ってるわけないよなあ、と思ったのだが、ふと俺は思い出した。かなり前だが、尚美の携帯でバックアップの設定をしてあげた事を。その時、尚美から聞いてIDとパスワードを入力したんだった。


思い出せ! 思い出すんだ、自分!

確かパスワードは単純だった。尚美の誕生日だったと思う。しかしIDは……。へんてこりんなIDで、とても覚えられそうになく、紙に書いてもらったっけ。

そうだ、紙だ。確か小さなメモ紙だった。あれがまだあって、見つかりさえすれば……!


俺は6畳間のローテーブルの近辺を、必死になって探した。そこで尚美の携帯をいじっていたからだ。

メモだから、すぐに捨ててしまった可能性が高い。だが、残ってる可能性だってある。俺の性格では、そういう物はすぐには捨てない。例えば、この棚の上に乗せておくとか……

と考えながら棚の上を探したら……あった!

尚美の携帯のIDと、ご丁寧にパスワードまで書いたメモが見つかった。よっしゃー!