何も言えなかった



余裕だった

一度声をあらげただけで、ずっと彼女のペースで

私は、何も言えなかった


完全なる敗北


私が悪いんだけど


冷静にと思ってた私だったけど、さっちゃんも了承と聞いて、心が空っぽになった



ここに来ることを、承諾した


最後を奥さんに委ねたんだ



あんなに、愛してると言ったのに


奥さんにばれたら、奥さんにさっさと謝って、後始末は妻任せ…



最後のお別れすら言ってくれないくらい、あっけなく


さっちゃんは、こんなこと、よくあることだったんだ



一人舞い上がって、本気になってしまって、とんだピエロだ


何やってんだ、私



情けない



情けないけど、さっちゃんから、さようなら聞きたかった



突然すぎて、ショックが大きすぎて、涙すら出ない



ただ、ずーっと、放心状態だった


時計のカチカチって音だけが、静かな部屋に響いていた



私の部屋なのに、私の部屋じゃなかった


何の対処も出来なかった自分に絶望とか思う余裕もなく、何をどう考えたらいいかもわからなかった


わかっているのは、私は必要ない女だったってこと



私は、愛されてもなかったってこと


笑える…