『一つだけ、教えてくれ』




『はい?』




『俺がもし、もっと早く君と出会っていたら、俺の手握ってくれたか?』




私は静かに微笑み言った






『握っていなかったと思います。さようなら』




今度こそ、喫茶店を後にした


出会うタイミングが、もう少し早く、何の障害がなくても、私は最終的に彼を選んでいないだろう


この前、奥さんに彼の過去を聞いたのも、自分の決心を後悔させないためだ


彼は、本気でないにしても、多分他を見てしまう人だろう


私と一緒になっても、ずっと私だけを見てくれると思えない


そんな時、奥さんほど堪え忍ぶほど、彼だけを待つ自信も私にはない



周りを傷つけてこの恋を得たとしても、永遠を誓い合う相手に思えなかった


最後は私を選び、私を待ってくれたけど、私は彼を信じ、待ち続けれなかった


はるがいなくなるとわかれば、はると別れたくないとも思ったわけだし、私の中での一番じゃなかったのだろう




それに、誰かを傷つけても、手にいれたい相手なら、あんなにも長く、他の誰かと同時進行する恋愛はしない



もっと早く、一人を選び、その人のことだけを思うだろう



私にとって、はるもさっちゃんも、最後の相手ではなかった