その隙に僕は肩から斜めに掛けた鞄から三脚を取り出し、カメラを固定する。シャッター時間を長めに設定して、最後にフラッシュも炊く。そうすることで夜景も仄かに写り、彼女の横顔が背景に映える。
何度もシャッターを下ろして彼女の横顔を撮りながら、いつも思うことが二つある。
ひとつは、太陽の下で笑う彼女を撮りたいということ。
夜のネオンに淡く揺らぐ彼女は綺麗だけれど、太陽の光を浴びて輝く彼女もきっと素晴らしいと思うのだ。日差しを受けて目を細める彼女、青い芝生に寝転び陽光を全身に浴びる彼女、光に透かされる彼女の髪の毛は、きっと琥珀色に反射する。──ああ、考えるだけで身震いすらしてしまう。
そしてもうひとつ気になることは、その憂いを帯びた瞳が見つめる先、だ。
もちろん彼女が見つめる先は、具体的には毎夜違う。しかしその瞳の色はいつも同じなのだ。ネオンを眺める彼女はいつも同じことを考えている。僕はそのことに確信を持っていた。
彼女は何を考えているのだろう。そう思いながら僕はシャッターを切り続ける。この時ばかりは、彼女の虜になっているという表現をせざるを得ない。街を見下ろす、ファインダー越しの彼女は恐ろしい程に魅力的で、美しくて、愛おしかった。


