「ほな、帰ろうか。目的の悪霊もおらへんかったし。今回はハズレやったさかい」

「そうだね。私の方でも探してみたが、なかなか見つからなかったよ」


嘘だ。
二人共嘘をついている。

おそらくお互いにそれは分かりあっているだろう。

だが敢えて尋ねないのは、それぞれに『事情』があるから。

その『事情』も含めて、二人は分かり合っているからこそ。


「そうだ、鶴」

「…せやから、【鶴】や呼んでええんは姐さんだけやってなんべん言えば…」

「私の名前を呼んでくれ」

「……、は?」


来たときと同じように転送し屋敷の前まで帰ってきたとき、突然カルハはそんなことを申し出た。

いきなり何を。
鶴嫁怪(つるかけ)は目を丸にした。

その鶴嫁怪の大きく開いた瞳から逃れるように、カルハはフイと目を逸らして頬を掻く。