おばあちゃんに連れられ、私は家の中に案内された。


「私は神谷絹代。」


廊下を歩きながらおばあちゃんは言った。


「ここでこの猫たちと暮らしているの。」


この猫たち、やっぱりおばあちゃんの猫だったのか。


「正確に言えばこの猫たちはみんな野良猫で、この家を集会所にしてるってとこかしら。」


「そうなんですか。」


「あなた、名前は?」


「私は南夏樹です。」


「夏樹ちゃん、ね。」


絹代さんが微笑む。


「夏樹ちゃんに見て欲しいものがあるの。」


絹代さんはそう言って突き当たりにある部屋に私を通した。


八畳ほどの畳の部屋の真ん中に布団が敷いてあった。


中で誰かが寝ている。


その枕元に1匹の黒猫が座っていた。





「おいで、ぬーちゃん。」


絹代さんにぬーちゃんと呼ばれた猫は立ち上がり、絹代さんの足元までやってきた。


絹代さんはその黒猫を抱きかかえると、また自分の額を黒猫の額に当てた。


「変化なし、か。」


絹代さんはそう言って黒猫を床に下ろした。


「この黒猫はね、ぬーちゃんっていってこの前孫からもらった子なの。ぬーちゃんはあの子の様子をつきっきりで見ていてくれてるのよ。」


「あの子?」


絹代さんは布団を指差す。