どうする?
マカロンの言葉は忘れる?
このまま何も考えず、何も聞かなかったことにして、何も知らなかったことにすれば、今の幸せは崩れることはない。
目を覆い、耳を塞げば…
俺は揺れていた。
「どうしたの?黙り込んで。」
マカロンを床に下ろした智子が俺の顔を下から覗き込む。
決断の時は来た。
「あのさ、智子…」
俺は智子を信じることに決めた。
そして智子に尋ねた。
昨日誰といたのか、俺の他にも交際相手がいるというのは本当か。
智子は黙って聞いていた。
全てを話し終えた俺は静かに智子の言葉を待つ。
ただひたすら、智子を信じていた。
そんなわけないじゃんと、笑って返してくれることを期待していた。
長い沈黙のあと、智子が口を開いた。
「誰からきいたの…?」
智子はただそれだけ俺に言った。
言っていいものかと悩んだが、マカロンの方を見るとなんで言わないのかとでもいうように首を傾げていたので、正直に言うことにした。
「マカロンからきいたんだ。」
すると、智子は俯いていた顔をあげ、俺を思いっきり睨んだ。
「真面目に答えて!!」
俺は真面目に答えたつもりだったが智子は何が気に障ったのだろうか。
「俺は真面目に答えたよ。」
「答えてないじゃない。」
智子が冷たく言い放つ。
そしてマカロンを指差し、俺にこう言った。
「猫が喋るわけないでしょ。」
意味がよくわからなかった。
それもそのはずだ。
当時の俺は俺以外の人間が猫の言葉がわからないということを知らなかったのだ。
「ふざけないでよ、どうせ私の携帯とか覗いたんでしょ。」
智子は机の上に置いてあった携帯を指差す。
「見てないよ、マカロンが…」
「いい加減にして!!」


