そう呼びかけられた気がして、俺は声のした方を見る。
すると、真っ白にピンクのリボンをした子猫が俺の顔を見上げていた。
青い丸い目が俺の目をしっかりと捉えていた。
「お前、誰だよ。」
猫が喋る。
さっきの声はこいつだったのか。
「俺はアキハ、智子の彼氏だよ。お前は智子の猫か?」
「ふーん、アキハか。だせぇ名前だな。オレは智子の飼い猫、マカロンだ。」
なんだかイラっとする猫だ。
ふとマカロンの後ろを見ると、ドアが少しあいていた。
智子が出て行った時にすれ違ってこの猫が入ってきたんだろう。
「それにしても…」
マカロンが俺の顔をまじまじと見つめる。
そして衝撃的な発言をする。
「今日の男はなんとも平凡な顔のやつだな。昨日智子が連れてきた男はもっとイケメンだったぞ。」
「え?」
どういうことだ。
昨日って…バレンタインだよな。
智子は用事があって会えなくて…それでその次の日である今日会うことになったのだ。
智子が昨日男を家に呼んでいた…?
親戚か?
親戚が遊びに来るから俺と会うのを今日にしたんだろうか。
俺がそんなことを考えているとマカロンは俺の膝の上に乗り、のどをごろごろ鳴らしながら言う。
「智子のやつ、昨日もクッキー男にわたしてたぞ。一昨日も。人間はこの時期になるとクッキー焼きまくるのか?智子はクッキーは大量生産できていいって喜んでたが。人間のメスも大変なんだな。」
「え…」


